老舗店が語る新町の魅力

新旧の人と住まいがうまく共生している町です。

兵庫屋本店15代目 代表取締役 渡邊稔晃(としあき)さん

「兵庫屋本店」とは?

正徳5年(1715)に創業した醤油・味噌製造販売の老舗。一番人気の刺身醤油“蔚山”をはじめ、麺つゆや白だしなど約20種類のオリジナル商品を販売。築140年を超える赤いレンガの麹室はギャラリーとして開放されており、江戸時代の帳簿や絵画など貴重な資料を展示。営業時間内であれば自由に見学できる。

「兵庫屋本店」について教えてください。

「兵庫屋本店」は味噌・醤油を扱う醸造元として知られていますが、最初は質屋が始まりです。初代・渡邊祐輔は関ヶ原の戦い後に清正の家来として播磨の国から新町へ移り、将来を見据えて商人の道を歩み始めました。その後、この地に出ていた湧水を生かし、造り酒屋を経て味噌や醤油を醸造・販売するように。

私が幼い頃は電車通り沿いまで敷地があり、3階建て20部屋に職人さんたちが住み込みで働いていました。先代である父が突然他界し、しばらく母が頑張っていましたが「後継ぎがおらんなら暖簾をおろす」と言いまして。周囲から存続を願う声も多く、わたしが20代半ばで暖簾を継ぎました。それまで別世界で働いていたので迷いや葛藤はありましたが、醸造を醤油だけに絞り、さらに新商品のアイデアを考えたり自ら配達に出たりと、自分なりのスタイルで今日まで続けることができました。

醤油や味噌は日本人にとって必要不可欠である一方、万人の口に合う味を作り出すことは難しい。ですが、一度気に入ってもらえば「慣れた味」として愛着を持っていただけます。添加物も甘さも控えた昔ながらの醤油を、たくさんの方に味わっていただきたいです。

社長が思う新町の魅力、暮らしやすさとは?

新町では夏祭りや花見など町の人同士が交われる機会を作り、代々暮らす人と新しく暮らし始めた人がうまく共生しています。散歩がてら町を歩くと肉屋や魚屋、八百屋などの個人商店があって、コミュニケーションもとれるところが良いですね。私どもも暖簾の味を守り、愛され続ける店を目指してまいります。

私が気に入っている新町周辺のオススメスポットを紹介します。

蔚山町(うるさんまち)電停

▲当店でもこの名を冠した醤油を造っています

加藤清正が朝鮮の戦いに苦戦して籠城した、韓国の「蔚山」。その歴史を偲び、市電の電停に名が残されている。

古城堀端公園

▲散歩や憩いの場として愛される公園です

古城があった場所(現在の県立第一高等学校)に石垣を見ることができる。春は花見客も訪れる桜の隠れた名所。

大月山公園

▲ここを起点に旧街道までの里数(距離)を測ったそう

「YMCA学院」近くにある公園で、かつて肥後(熊本)藩における種々の政令を掲示する「札の辻」があった。

醤油・味噌製造販売の老舗 兵庫屋本店

熊本市中央区新町3-4-2 TEL:096(352)0280